その視線は氷のように冷たく
「ジュンと遊ぶの、久しぶりだね」
まぁ、遊ぶと言ってもただ話すだけなのだが、そんなことを遼太郎はふてくされるようにしながら言った。
「そうだなぁ…」
神社にいる…これは確か、半年前だ。竹林の騒めきが何となく印象的だったので妙に覚えている。
「もうすぐ半年だね」
「何が?」
「書生として秋山家に住み込み出してさ」
あぁ、そうか。住み込みで家庭教師をしている秋山家に暇をもらって遼太郎とここに来たのだ。ざわざわと揺れる竹を眺めながら、二人で他愛もない話をした。
「もう半年か…早いなぁ」
「たまに街で会っても君は秋山家のお嬢さんのお守りで大変そうだし」
遼太郎は子供のように足をぶらぶらと揺らした。箱入り息子とでも言おうか、甘やかされて育った遼太郎は少し子供っぽいところがあった。
「秋山家の六人もだけど…街の娘は大概君を囲んでいるよね」
「あぁ…。五月蠅いよね…」
きゃあきゃあとよく聞き取れない甲高い声で娘たちが話す度、遼太郎の遊女のような笑みを思い出した。
しかし、時々遼太郎の方が幾分おしとやかで美しいと感じることもあり煩わしいばかりだった。
「まったく…。彼女達も報われないね」
「僕には君がいれば十分さ」
「本当?」
「あぁ」
遼太郎は嘲笑を見せた。
いつもの、薄く笑うようにする妖艶な笑み。
「僕も君さえいればいい。だけど…、」
遼太郎は目を細めた。
でも、笑ってるわけではない。
冷たい視線が僕に突き刺さる。
「あんまり僕を放っておくと、殺すよ?」
沈黙が流れた。そしてその後、
「嘘だよ」
遼太郎はにこりと笑った。屈託のない笑顔。作り笑いだ。
「…うん…」
わかってる。
それが、嘘。