未来は考える必要さえなく
涼しい風に、ざわめく桜の花。
どこかの縁側……あぁ、遼太郎の家だ。広い広い庭に、遼太郎の父親自慢の桜の木がある。
「ねぇ、ジュン」
遼太郎が若いなぁ……。五年ほど前だろうか。
「僕達、ずっと友達だよね?」
「未来のことはわからないさ」
「何でそんなこと……」
「君はお父さんのように政治家になるんだろう?」
「……そのつもりだよ」
「そうしたら、君は遠くなる」
遼太郎が俯いた。
「僕は、何があっても君の友達でいたいよ」
何があっても、ね……。
まぁ、そんなに僕のことを大切に思ってくれているというのは嬉しい。
「僕達は、今親友だ。明日喧嘩するかもしれない。けれど、今親友っていう事実があるじゃないか」
「それで十分、か……」
「少なくとも僕はね」
あの時は親友だ。
今だってそうだ。
そう、殺されている今、この瞬間だって。