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ココロにないもの

 名前は魔力を持ち、人は名前に魔力を奪われる。魔力の研究をしていたお祖父ちゃん、間藤進一郎の発見だ。お祖父ちゃんは自分の子供だけでなく分家の子供にまで自ら名前を付け、実験をした。
 魔力の底上げを図るには、魔力の代わりに差し出す何かの名前を借りればいい。それが名前に奪われるから。分家の恋さんは恋が理解できなくて恋を得られない。叔母の明おばさんは目が見えない。それは魔力を得た代償。ただ、恋さんは愛があるから家族はいて、明おばさんは魔法を使うから生活に支障はない。
 私は間藤心。魔力の代わりに、心がない。
 私のことを、従兄の喜お兄ちゃんは可哀想だと言うし父親は嬉しく誇りだと言う。でも私は、物事を全て事実として受け入れることしかできないから悲しいとは思わないし怒りもない。もちろん楽しくも嬉しくもない。
 ただ、日本の魔法使いの貴族である間藤一族の中で魔力が一番多い。それが事実。そしてその事実ゆえに世界の魔法学校の最高峰、エヴァンジェリン魔法学校に入学することになったのもまた、ただの事実なのだ。