Summertime Sadness
「、ひこうき」
滅多に見ない飛行機。数日前からハンガーにかけていた白いワンピースをおろして、着替えた。
網の張った飛行場へと向かうと、既に飛行機は着陸したようだった。
ワン、ツー、スリー、フォー。
心の中で数えたら、夏の太陽を背負ったあなたが向こうからきた。
私は何食わぬ顔でソフトクリームを舐める。
じりじりと焼けつく太陽の光で、小さな島の滑走路は陽炎で揺らめく。古ぼけたテレビで眺める映画のように、ひりひりと胸を刺す。
あぁ、夏だなって思うわ。
夏の間だけ――この季節だけ、やってくる人。
この島には、何やら軍の施設があって、夏は暑すぎるから、メカニックの軍人さんが助っ人にやってくる。毎年、毎年、彼が来る。
「やぁ、大きくなったな」
「綺麗になったって言って」
「そうだな、綺麗になった」
彼はがしがしと私の頭を撫でた。レディに対する態度じゃないわ。少しムッとすると、彼は私の髪に手櫛を通した。
「髪も、背も伸びたね」
胸も大きくなったんだけど、と言いかけてやめた。虚しすぎるもの。
太陽光がじりじりと胸を焦がしていく。
メカニックなのに引き締まった腕で、荷物を抱え直した彼は私に向き直った。
「今年もよろしくな」
「……うん」
ソフトクリーム、食べるんじゃなかったわ。ベトベトしてきて、服に垂れそう。
めいっぱいおしゃれした、真っ白なワンピース。映画の女優さんのようにゆったり歩けば、私もグラマラスな女になった気分。
「高校生になったんだろ?」
「そう。本土まで通ってる。今は夏休みなの」
「若いなぁ」
たった、15歳しか違わないわ。
もう、何年になるのかしら。
毎年毎年、夏は嬉しくて、悲しくなる。
だって毎年夢見るの。
夏が終わる頃にドラマのようなキスをして、この狭い島から連れ出してくれること。
たった、15歳しか違わないんだもの。
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[youtube url=http://www.youtube.com/watch?v=nVjsGKrE6E8&w=320&h=240]Lana Del ReyのSummertime Sadnessです。
歌詞はこちら。
ラナはアンジー主演の「マレフィセント」で怨念こもった「Once Upon a Dream(いつか夢で)」とか歌ってるから是非聞いてみてください。
ラナ可愛いよラナ。
しかし洋楽はバンバンYouTubeに上がってるからいいなー。
これ、続編も決めてます。
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