キャロルの恋人の恋人
体が痛みを感じなくなって、心まで鈍化したような気がしていた。けれど、そうでもなかったらしい。
「……ウルリカ」
アタシを呼ぶ熱っぽい声に、ぽっと火が付いたようにじんわりと温かさが広がる。
「ホントに抱かれるとは思ってなかった」
ブランケットを引っ張り上げてくすりと笑うと、彼はアタシの頬をつまんで横に引っ張った。
「演技してくれるとは思ってなかった」
「あら……」
意外にもアタシのことをよく見ている、と思っていた。彼を過大評価していたようだ。
散らかした服の上にのっている彼の眼鏡を拾い上げてかけてみる。と、彼はアタシを抱き寄せて首筋にキスをした。
「アタシ、あなたのことふってないわよ」
「うそつき。君の心にいるのは僕じゃない、だろう?」
そう。そういって一方的にふられたのはアタシの方。
「心配しなくても、すごく好きよ」
「……心配なんて、してない。いたっ、噛むなよ……」
彼の首に腕を回して、首筋に噛みつくと彼の目尻にはうっすらと涙が浮かんだ。くっきりと残った歯形が、面白い。
「その顔、すごく好き」
「仕返ししてやる」
アタシが痛みを感じないと知ってるのに、優しい人。唇を噛まれるのも、優しくくすぐったくて気持ちいい。
本当に大切なのだけど。何度口に出しても彼は信じてくれないのだ。
あとがき
ただのバカップルじゃねーか。
普段小説にあとがき書かないんですが、これだけは下書きの最後に書きなぐってありました。
ただのバカップルじゃねーか。