Mymed:origin

ほろ酔いパーティー

「大木くん、大丈夫かな」

 浅田の言葉に武井は短くため息をついた。大木は人の家にきておいてすやすやと寝ている。

「明石、起こして」
「恵ちゃーん」

 川口の呼びかけに反応はなく、武井は仕方なく大木の肩をゆすってみた。それでも起きないので、もう少し寝かせてあげようよ、と川口が言う。
 今回の会は大木が言いだしっぺだった。旅行の土産を渡したいというので大木の家に集まる予定だったが、翌日に朝早くから予定があるという武井の家に集まったのだ。

「明日、徳田が朝一で来るのよ」
「そりゃあ、このまま朝まで寝かせとくわけにはいかないねぇ。下着だし」

 村上が酒を煽りながら言う。アルコールが入った村上は少し声が大きくなっていたが、それでも大木が起きる気配はなかった。

「本人も弱いとは言ってたけど、缶チューハイ舐めただけで脱いで寝るとは」
「うん、川口の方がまだ飲む感じかな」
「そうだねぇ。私、よく横溝くんがバイトしてたバーに通ってたし。ちょっと強くなったかも」
「川口、一人で飲みに行ってたんですってね。花井が時々ボヤいてたわよ」
「えっ、一人で?」

 川口の言葉に村上が食いついた。村上は高校生の頃に横溝に恋をしていた。尋ねられても否定していたし、本人は隠しているつもりだった。すべてを理解していた当時の明石がここまでストレートに話に食いつく村上を見たら驚いたことだろう。

「花井くんのバイト先が近かったから、横溝くんと話しながら待ってたんだ」

 そのとき、大木が突然ぱっちりと目を開いた。浅田が一瞬びくっと肩を震わせる。

「お、起きた……?」
「……うん。……なんで脱いでんだろ」

 寝起きの大木はテンションが低い。武井が持ってきた水が入ったグラスを受け取り、大木は一気に飲み干した。それから、自分で脱ぎ散らかした服をもぞもぞと着ていく。

「大木、迎え来れそう?」
「うーん。わからない。あっちも盛り上がってるっぽくて、既読ついてない」
「そっか。あ、ねぇねぇ、明石ちゃん、さっき言ってた写真見せてよ」
「んー」

 浅田に言われるまま、テレビにスマホを繋いで写真を表示する。すると、美しい海原の真ん中に水着ではしゃぐ大木が映し出された。

「大木がはしゃいでる写真なんか見ても……」
「えぇー、可愛いでしょ」
「ハワイのどこ行ったの?」
「この海はホノルルだね。あとはー、えっと、火山とか」
「ダイアモンドヘッドかしら」
「そうそう!」

 女性陣が盛り上がっているとチャイムが鳴った。武井がドアを開けると、ほろ酔いの男性陣が立っていた。大木が嬉しそうに笑いながら真面目くさって言う。

「嫁さんを迎えにきました」
「明石、迎えきたわよ」

 大木恵が出てくると、入れ違いで徳田と花井が入ってきた。

「武井、泊めてー。お前らに対抗して俺達も男子会してたけど、むさくるしいわ横溝は彼女に呼ばれてすっ飛んで帰るわで」
「穂積さん、僕たちも帰ろう」
「うん。今ね、恵ちゃんに新婚旅行の写真見せてもらってたんだよ」
「私たちも今後は川口みたいに恵って呼ばないとね」
「そうだな」

 武井の言葉に同意しつつ、徳田が上がり込む。

「女子会はお開きだねー、私も帰ろ」
「浅田、うちら二人で次行こう」
「村上ちゃん、私たちすっごく寂しい感じだよ!?」

 ほろ酔いの宴は夜にしみこんでいった。

 明石と大木の結婚後。
 叙述トリック目指して頑張ってみたけどこれが精いっぱいだった。