Mymed:origin

のばら

 決めたら早かった。
 いらないものを透明の燃えるごみ専用の袋に詰め込んでいく。本当は自分で燃やしてしまいたいけれど(火が揺れるのを見るのは好きだし)、そうもいかないのが世間体とかそういうしがらみだ。
 時折、めちゃくちゃな鼻歌を歌う。それに合わせてめちゃくちゃなステップで踊る。気持ちは妙に逸っていた。
 ロープを買ってきた。それから、いらないものは全部捨てた。荷物はかなりコンパクトにまとまった。きっと運び出すのは簡単だろう。

 外は鬱陶しいくらいの雨。ずっと降り続いているけれど、ここ数日特にひどい豪雨だ。
 仕事をクビになった。恋人とも喧嘩をした。彼が四六時中話しかけてくるから少し控えてほしいと言っただけなのだけど。
 世界中の人に指を差されて笑われている。今も、ずっと。
 最悪だ。テレビも壊れてしまったようで、奇怪な音を流すだけになってしまった。だるむるのるちょるするいるりるつるがるかるこるさるいるてるいる。意味わかんない。
 雨音がうるさい。
 分厚い雨のカーテンの奥では、世にも綺麗な野ばらが咲いていた。

 あ、逃げよ。
 決めたら、早かった。

Coccoののばらを聞きながら、そのイメージを書きました。
この掌編小説は、著作権を放棄します。