雨宿り
電気を付けることすら面倒な気分にさせる、気だるさを感じる雨だった。庭にいた野良猫、大丈夫かな。
手探りで尻のポケットに入れていた煙草を取り出して、同じく手探りで取り出したライターで火をつける。じわっと煙が肺に広がったのを味わって煙を吐くと、部屋の空気まで気怠いものに変わった気がした。
テレビをつけると、青白い光が目に痛かった。変に主観的なニュースや、評論家。この時間じゃニュースばかりか。BGMにしては華がないが、仕方ない。適当に音量を下げて天井を見上げると闇の色だった。
CMで流れたキヨシローの声がひどく楽観的で、ふぅっと息を一つ、吐いた。
「間違ってるよなぁ」
ふっと口をついた言葉は、自分でも戸惑うほど自然に出てきた。
それはニュースに対してではなく、ニュースに取り上げられている顔の見えないネット住民にでもなく。
神様、連れてく人間、間違えただろ。見てほしかった。あの時のこと。あの人が何て言うのか、聞きたかった。
青白い弱い光だけが部屋を照らす。こんなに感傷的になるのは、きっと雨のせいだ。部屋の中にいるのに、雨に打たれているような気分だ。ただ一人の人間がこの世から去ってしまった、その身を刺すような事実が、降りかかっている。
「ずっと…」
ずっと夢を見て、幸せだったな。
まだ、たぶん同じ夢を見ている。この国を包む、悪夢を。
!
斉藤和義の雨宿りを聞きながら、そのイメージを書きました。
なんかほとんど歌詞そのままになってしまった。
この掌編小説は、著作権を放棄します。